仏教思想「もったいない」の本当の意味と由来

【もったいない】という言葉の本当の意味をご存知でしょうか。もったいないと名が付く買取専門店があるくらいなので、物を無駄にしたくないという意味は広く知られていることでしょう。

ですが、もったいないとは元々仏教の思想から来ている言葉で、物や状況などに対する深い感謝の気持ちがこもった表現ということは意外と知られていないのでは?今や世界的な「MOTTAINAI」になった言葉について学んでみませんか。

【もったいない】意味と由来

「もったいない」とは、利用できるものが無駄になっていることへの、残念さを表現する言葉です。また、他人の配慮や気配りに対して「自分には分不相応なほどありがたい」と表す表現方法でもあります。

普段私たちは「食べ物をそんなに残してもったいない」「そのような誉め言葉は自分にはもったいない」などと「もったいない」を使いますね。

「もったいない」は「勿体ない」とも書き、仏教の思想から生まれた言葉と言われています。勿体とは「物体」を意味しており、物の本来の姿という意味です。「物体」とは、仏教用語。つまりもったいないとは、物のあるべき姿が「無い」という意味です。

「物の本体はない」=「この世には完全に独立して存在しているものはなく、すべての物は繋がっている」という仏教の「空(くう)」の思想に通じています。

わたしたちは「個」ではなく、繋がって支え合っているという仏教的な真理を表している言葉と言えるのです。

「もったいない」とは、目に見えない”人とのご縁”や”何かの力”を意識し、それに対して「ありがたい」「申し訳ない」など、深い感謝をする表現でもあります。ですので、単に物を惜しむだけの表現ではありません。

世界にもある【もったいない】

世界にも「もったいない」という考え方はあります。しかしそれは、物を無駄にすることを「もったいない」「無駄にして残念だ」と思う気持ちの表現だけ。日本ほど深い思想はありません。

たとえば、スウェーデンやデンマークなどはゴミのリサイクル率が高いことで有名な国々ですね。

スウェーデンでは、燃えるゴミを暖房や発電のエネルギーとして使用しますし、下水から燃料となるバイオガスを作ります。

デンマークでは、粗大ゴミのリサイクル利用が進んでおり、リサイクルをしないとかえって税制上損をする仕組みになっているほど。

これらは限られた資源を大切にしたい気持ち、つまり「もったいない」精神と言えますね。

今は各国でリサイクル活動への関心が高まっていますので、「もったいない」は世界共通語と言うこともできます。

外国の「もったいない」はあくまでも物を資源として惜しみ、大事にしようという意識にすぎません。日本語の「もったいない」は、神仏の世界にも通じる深い感謝の気持ちですから、より奥深い意味を持った言葉と言えるでしょう。

世界の中での【MOTTAINAI】キャンペーン

ノーベル平和賞を受賞したワンガリ・マータイさんによって「MOTTAINAI」という言葉は2005年に世界的な共通語になりました。

マータイさんは、ケニアの元環境・天然資源省副大臣でした。マータイ女史は、長年人権や環境問題に取り組んできた実績が高く評価され、2004年にノーベル平和賞を受賞。

マータイさんは翌年に毎日新聞社の招待で来日し、日本の言葉「もったいない」に初めて触れて強い感銘を受けました。もったいないという言葉には、単に資源を有効活用しようとする意味だけではなく、資源に対する尊敬の念も含まれていると理解したからです。

このとき初めて「MOTTAINAI」は、本来の日本語の「もったいない」の意味を持って世界的に知らしめられたと言えるでしょう。

マータイさんは、ニューヨークの国連本部での委員会などで「MOTTAINAI」を全世界に発信し、その精神を広める活動をしてきました。

残念ながらマータイさんは卵巣がんのため、2011年にお亡くなりに。ですが、マータイさんが始めたMOTTAINAIキャンペーンは引き継がれ、今も様々な社会貢献活動が行なわれています。

MOTTAINAIキャンペーンは、今話題のSDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標)の考え方とも一致し、さらにその取り組みの幅を広げました。

日本から生まれた「もったいない」は世界的なMOTTAINAIキャンペーンとなったのでした。MOTTAINAIキャンペーンは、地球に負担をかけないライフスタイルを提案し、無理なく続けていけるエコ社会の実現のために今も活動をし続けています。

【もったいない】は日本が誇る独自の思想

ノーベル平和賞受賞者ワンガリ・マータイさんによって世界的な言葉となった「MOTTAINAI」。その本当の意味を知ると、外国人も感動するほどの深い意味を持った言葉です。

言葉はその国の人の精神です。「もったいない」は、私たち日本人の生き方そのものが現れた言葉と言えるでしょう。

普段当たり前に使いがちな言葉ですが、このような表現を生んだ日本の思想を私たちはもっと誇りに感じても良いのではないでしょうか。