武士とは?武士の起源や現代でも通用する「武士道」の考えを解説

この記事では、武士の意味や起源、武士道の価値観について解説していきます。およそ1000年もの間日本の頂点に立ち、政治の実権を握り続けた武士。「武士道」と呼ばれる彼らの価値観は、現代を生きる日本人にも強く受け継がれています。

武士のルーツを知ることは、日本人を知ることだと言っても過言ではありません。今回は、武士の意味や起源、価値観を通して私たち日本人の精神性に迫っていきます。

 武士とは

武士とは「武芸を極め、戦いを生業とする者」です。簡単に言うと、戦闘のエキスパート。弓術や馬術、剣術に優れているのが特徴です。そんな武士たちを率いたリーダーを武将と言います。織田信長や豊臣秀吉、武田信玄など、日本の歴史上で有名な武将たち。彼らは一癖も二癖もある武士たちをまとめ、導いた有能なリーダーたちだったというわけです。

日本の歴史では、平安時代中期頃から江戸時代末期まで、約1000年に渡ってこの武士が政治の中心となって日本を動かしました。しかし江戸幕府の力が弱まり、身分制度の改革や廃刀令によって、武士の時代は終焉を迎えました。

武士と侍の違い

同じ刀をもって戦う武士と侍。現代では両者を同じ意味として使うことも珍しくはありません。しかし、厳密にはその意味合いは少し異なります。

武士は先述のように、「武を生業とする戦闘の専門家」です。武を本分としていれば、仕える主のいない失業者でも、武士を名乗ることができたわけです。

一方の侍。侍の語源は、「人に仕える」という意味の「さぶらう」にあります。侍はその語源の通り、皇族や貴族などの貴人に仕えた武人のこと。つまり、上司から「キミ、明日から来なくていいよ」とクビを切られてしまえば、武士ではあっても侍ではなくなってしまうというわけです。

貴人に雇われ、肩書や収入が保証されているという点において、侍は武士の中でもエリート階級だったと考えることができますね。

武士の起源

武士の起源には、二つの考えがあります。一つ目は地方で武装した有力農民だとする考え。平安中期、中央政府の力が及ばず、地方は治安が悪化。群盗が多く発生しました。そんな状況の中、「自分の身は自分で守る!」と武器をもった農民たちが武士になったという考え方です。

これに対し近年では、「武士は都から発生した」という考えが有力。中央政府で重要なポストに就けなかった中~下級の武官や貴族の子孫たちが地方に渡り、農地争いに参戦するようになったのが武士の始まりだという考え方です。

武装し、土地を奪い合う過程で、地方の有力な勢力と結びつくことで、武士団を形成。のちに日本の政治に大きな影響を及ぼす勢力へと成長していったわけです。

武士の文化・価値観

日本の武士や侍には、「武士道」と呼ばれる共通の価値観や行動規範がありました。実はこの武士道こそ、現代の私たちに通じる「日本人らしさ」と呼ばれる精神性や倫理観のルーツと考えることができます。

現代日本人にも通じる「武士道」

武士道の考えは、時代と共に少しずつ変わっていきました。平安~室町・戦国時代にかけては戦のルールであったり、敵を倒すための考えやノウハウといった要素が強かった武士道。しかし江戸時代になると、中国の儒教の影響を大きく受けた思想に変化しました。武人としての在り方や精神性を基礎とした教えになったわけです。

 そして現代日本人の精神に大きな影響を残しているのが、江戸以降の武士道だと言えます。

武士道の基本理念「義・勇・仁・礼・誠・名誉・忠義」

武士道には、「義・勇・仁・礼・誠・名誉・忠義」の7つの基本理念が存在します。

  • 「義」正義、人として正しい道
  • 「勇」正義を貫くための勇気、勇敢さ
  • 「仁」優しさ、思いやりの心
  • 「礼」敬意や礼儀正しさ
  • 「誠」誠実さ
  • 「名誉」威厳や名誉
  • 「忠義」主君への忠誠心

武士には、この7つの理念が重要だと考えられていました。勇気、優しさ、誠実さ。現代の私たちも、礼儀正しい人、誠実な人、個よりも集団を優先する人に対して、「日本人らしいね」と言ったりしますよね。

「武士道」というと私たちには関係のない思想に感じられますが、現代でも「道徳」や「倫理観」という形でこの考えは多くの日本人に共有されているわけです。時に日本人は「融通が利かない」、「人の頼みを断れない」、「体裁を気にする」などとネガティブな評価を受けることもありますが、それもこの武士道の一面と考えることができます。

 武士道の考え方については以下の記事に詳しく記載しているので、ぜひご覧くださいね!

   武士道とは侍に求められた道徳観|武士道誕生の歴史

新渡戸稲造の「武士道」

日本人の武士道精神は、海外でも広く知られています。そのきっかけの一つは、新渡戸稲造の著作「武士道」です。日本人の道徳観について解説したこの名著は英文で書かれ、海外でも広く愛読されました。

日本に来た事がない海外の人にも「サムライ」や「ハラキリ」といった文化が認知されているのは、新渡戸稲造の影響もあるのかもしれませんね。

武士道は現代ビジネスの心得

江戸幕府の終焉と共に力を失っていった武士ですが、その精神は現代の日本人にも受け継がれています。そしてこの武士道こそ、ビジネスの場でも不可欠な考え方ではないでしょうか。

  • 千載一遇のチャンスに飛び込む勇敢さ
  • 相手を不快にさせない礼儀やマナー
  • クライアントや同僚に対する思いやり
  • 自分の行動や発言に責任をもつ誠実さ

 有能な経営者やビジネスマンの多くは、この武士道精神を備えているもの。今も昔も厳しい世の中を生き抜くために必要なスキルには共通点があります。見栄や体裁、個性よりも集団を重視する武士道の考えは時にネガティブに語られることもありますよね。

しかし一方、義理や誠実さ、勇敢さや思いやりの精神は、私たちが世界に誇れる強みと考えられます。ビジネスの世界では、型にとらわれない発想も大事ですが、最低限のマナーや誠実さはそれ以上に不可欠です。

 武士道精神は、武士の時代のみならず、現代のビジネスでも多いに通用する精神だと言えるでしょう。