清少納言(せいしょうなごん)は、誰もが教科書で1度は目にしたことがある『枕草子(まくらのそうし)』を書き上げた随筆家(ずいひつか)で、平安時代を代表する文化人のひとりです。
清少納言のキラリと光る鋭(するど)い感性で書き上げられた「枕草子」は、人々がつい見落としてしまいがちな日常的風景が瑞々(みずみず)しく表現されています。1000年経った今でも普遍的(ふへんてき)な共感を呼び人気の高い作品ですが、実は現代でいう“毒舌エッセイ”のような読み物として親しまれていたようなんです。
今回は、そんな清少納言の「毒舌でやりすぎちゃったエピソード」をご紹介します。
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枕草子に書かれた毒のある言葉
まずご紹介するのはご存知『枕草子』に描かれた毒舌集。かなり毒のある言葉ばかりですので、心してお聞きください。
【ブスの昼寝姿は見るに耐えない】
原文にて「夏、昼寝して起きたるは〜」と書かれている部分があります。これを現代語で訳すと
「夏に昼寝から起きた姿は、身分の高い人ならそれなりに風情(ふぜい)があるけど、ブスの顔は脂でギトギトだし、浮腫(むく)んでパンパンに膨れ上がってるし、まるで顔全体が歪(ゆが)んでいるように見える。ブス同士でそんな顔を見合わせてしまうなんてことがあったら、生きていたって仕方がないくらい最悪」
となるのです。かなりの毒舌ですね…。「身分の低いブスの寝起き姿は最悪!」と、乙女の心にぐさりと突き刺さるような激しい描写(びょうしゃ)ですが、実は清少納言、自分の容姿に対する評価にも厳しい女性でした。
当時はサラサラのストレートヘアーが美の象徴とされていましたが、清少納言は真逆の天然パーマだったよう。皆さんが思い描く清少納言はサラサラのストレートヘアーで描かれたものが大半だと思いますが、実はあれ、付け毛だったんですね。
おまけにシャイな性格でもあったので、宮仕(みやづか)え初日は俯(うつむ)きながら物陰に隠れるほど緊張してしまい、髪の毛で顔を隠そうにも「そもそも私の髪は他人に見られたら恥ずかしいものなので…」と言ってしまうくらい、自身の容姿にひどくコンプレックスを感じていました。
枕草子の中でも自身の容姿を自虐的(じぎゃくてき)に綴(つづ)った描写がありますが、美意識の高さからこんな文章を綴ってしまっていたんですね。寝起き姿に身分の位が関係しているところにも、清少納言の性格の悪さが伺えます。
【ブサイクな赤ちゃんをあやす母親って超ムカツク】
「かたはらいたきもの。憎(にく)げなる乳子(ちご)を…」という部分を現代語にすると「見ていられないもの。それはブサイクな赤ちゃんを盲目的(もうもくてき)に可愛がり、赤ちゃんの声真似をしてあやしたことを他人に話している親バカ」となります。
全世界のお母さんたちを敵に回してもおかしくないくらいの毒舌っぷり。わが子を可愛がる姿はなんとも微笑ましく感じますが、赤ちゃんがブサイクなだけで清少納言にとっては「見ていられないもの」に変貌(へんぼう)してしまうんですね。
「ブサイクに容赦のない清少納言にはあまり近付きたくない…」そう思われても仕方のない1文です。
【下衆(げす)は騒ぐな!】
「はしたなきもの。旅立ちたる所にて、下衆どものざれゐたる」という部分を訳すと「見苦しいもの。それは、旅行先で身分の低い者たちがふざけ合っているさま」となります。良かった、今回はブサイクに対する悪口じゃなかった…と安心してはいけません。
昼寝の文章でも解説した通り、清少納言にとっては「身分が低い=ブサイク」なので、結局はブサイクに対する悪口と変わりありません。まさに清少納言ワールドです。旅先で気分が高揚しはしゃいでしまうのはある程度仕方のないことだと思いますが、清少納言の美意識はそれを良しとしないようですね。
宿敵・紫式部との毒舌エピソード
清少納言の宿敵として有名な紫式部。
その紫式部が書いた日記「紫式部日記」には、「清少納言は、得意顔で常に偉そうな人」といった記述があります。その他にも、「清少納言は利口(りこう)ぶって漢字を書いたり、人より優れたところを見せびらかそうとするけど、こういう振る舞いをする人は後々悪い方へと流れていく。行く末はどうせろくなもんじゃない」
など、散々な言われようです。なぜ、紫式部がこんなに清少納言を目の敵にしているのかというと、それにはちゃんと理由がありました。それは、清少納言が紫式部の亡き夫に対し、名指しで悪口攻撃をしかけたからです。
「あの人のファッションセンスには誰もが唖然(あぜん)とした。どうでもいいけどついでに書き残しておきます」と、亡き夫を面白おかしくバカにされたことに、紫式部は大激怒。夫婦仲が良かっただけに、話のついでに夫をバカにされたことが許せなかったようです。
紫式部本人ではなく、亡き夫を悪口の対象に選ぶところに、清少納言の意地の悪さが滲(にじ)み出ています。こんなことをされたら紫式部でなくとも怒ってしまいそうですが、清少納言のサバサバとした着眼点にはつい呆気を取られてしまいますね。
いかがでしたか?
清少納言の毒舌っぷりには目を見張るものがありますが、こうした人間味の強さから人々の共感を得る作品が生まれたとも言えるのではないでしょうか。日常のありふれた風景を随筆として1000年後に残してしまうあたり、やはり清少納言は天才と言わざるを得ない才能の持ち主です。
皆さんもぜひ1度、清少納言ワールド全開の「枕草子」に触れてみてはいかがでしょうか。きっとあなたのビジネスにも役立つヒントがあるはずです。よかったらコメントをしていただけると嬉しいです。
それではありがとうございました。