太平久しく候えば|吉田松陰の名言

「太平久しく候えば~」とは、平和な時代が続くと新しいものを取り入れていく気持ちが薄くなる、という吉田松陰からの注意提言です。現在はコロナ禍であり平和な時代と言えませんが、時代の転換期ともいえる世界に生きている今だからこそ、新しい発想・新しいビジネスに挑戦できるのではないでしょうか。

以下で、現代につながる名言の解説と、新規のアイデアで新時代に対応する企業の話などをご紹介します。

太平久しく候えば

「太平久しく候えば~」の内容を詳しく見ていきましょう。

原文

「太平久しく候えば、物事繁文(はんぶん)に赴き(おもむき)先例旧格に泥み(なずみ)、却って(かえって)実事に疎く相成り候て翻意を失ひ候事之れあるべく候へば、上欄・御参堂等諸事簡易を宗とし、時措の宜(じそのぎ)に従ふ事肝要に存じ奉り候。但し簡易と申し候ても太古の無為等と申す訳にては全く之れなく、只虚文を殺ぎて(そぎて)実事に帰するのみに御座候(ござそうろう)。」(明倫館御再興(ごさいこう)に付き寄附書 嘉永元年)

 

(訳)「平和な時代が続くと、世の中は、新しいものを取り入れていく精神が希薄になる。「先例がない」という理由で、大切かそうでないかの判断が行なわれにくく、ルールが複雑になって、細かい方、細かい方へと流れていく。簡潔をこそ心がけるべきだが、上辺だけのことではなく、実践的な教育が大切だ。」

解説

江戸時代の後期~幕末には、各藩による藩校が発達しました。明倫館は長州藩の藩校です。藩校は各藩が独自に次世代をになう武家の若者を教育する目的がありました。

藩校の教育とは、儒学者や兵学者を招き講義させる内容でした。時に、若い武士だけでなく、重臣たちもこれを聴講しました。

吉田松陰は十九歳(嘉永元年)の時に、この明倫館の教壇へ講師として立つことになったのです。松陰はわずか9歳で明倫館の兵学師範に就任するほどの秀才でした。

同じ年に、松陰は藩主・毛利敬親(もうりたかちか)に対して意見書を提出。これが「明倫館御再興に付き気附書」でした。

松陰にとって初めての藩主への意見書となるこの書類は、積極的に藩政に関わっていこうという松陰の意欲や、新しい時代への意気込みが感じられる内容となっています。

コロナの時代こそ、新しい発想で

コロナの時代は制限が多くなる時代だからこそ、ビジネスに新しい発想やアイデアが必要といえます。

コロナ後の世界を生き残っていくことができるビジネスマンは、幕末という時代の変革期に生きた松陰のように今までと全く違う発想を持ち、新しいビジネスを生み出せる人ではないでしょうか。

新しいビジネスの基本は、お客様のニーズをすくいとることです。それをコロナの時代に合ったやり方でビジネス展開すればいい、ということになります。

以下で、新しい時代の流れを読み、対応している企業をご紹介します。

庭木の手入れをする会社がどう変わったか

庭木の剪定(せんてい)などを専門にしていたO社は、現在、クライアントの持つ空き家や墓の管理などに事業内容をシフトさせているそうです。

空き家やお墓はどれも顧客の自宅からは離れた場所にあり、出掛けにくい時代だからこそ気づいた需要でした。

これらは、すべてお客様とのやり取りから、その隠れたニーズを見つけることができたといいます。

まず腹を割って顧客の本音を聞き出すことが、新しいアイデアを見つけるコツといえるのではないでしょうか。

創業100年の老舗企業がどう変わったか

次に、明治44年に創業したI社をご紹介しましょう。I社は元々筆墨などを販売する文具メーカーでした。I社はこれまでも時代の変遷にその姿を変えて生き残ってきました。最初の変化は、墨の販売からオフィス家具&OA機器の販売にシフトしたことです。

そしてこのコロナ禍。現在I社は、また新たな事業~中小企業向けのテレワーク導入のノウハウ提供~という仕事に業務シフトをし、それが成功しています。

週に3~4回開催している企業向けセミナーは、毎回大盛況だそうです。

今までの会社の歴史にこだわらない柔軟な対応も、このコロナ禍で求められることかもしれません。

アメリカでも新しい事業展開が次々と

アメリカでも2020年6月17日現在、コロナによる死者数は213万人超と世界最多の死者数を統計しており、非常に厳しい状況が続いています。

そのような中、EC通販のAmazon、自宅での動画配信サービスのネットフリックスの株は軒並み値上がりしています。在宅自粛が余儀なくされている状況なのでこれは予測できること。

しかし【新しい現実】を受け入れて、ダーウィンの進化論式に変化しているビジネスもあるといいます。

アメリカの病院でもオンライン診療(ビデオ受診)が始まっています。全米のほぼ40州で展開されているそうです。

また、アメリカ最大のある薬局チェーン店は、市販薬・化粧品・日用品の他に、処方薬の配達まで始めました。処方薬の配達料は無料にするなどして、持病を持つ人がリスクを冒さず薬を手に入れられるような取り組みを始めています。

良いマーケティングの基本とは【人々の困りごとに解決策を提供すること】です。この基本に基づくことも、新しい時代へ対応するポイントなのかもしれません。

ウィズコロナの時代を作るのは、あなたです

ウィズコロナの時代への対応はまだ模索が続いています。ですが、今までの時代とは一味違った世界が展開しそうな予感がします。

新型ウィルスと上手く付き合っていければ、あとは新しい世界へ踏み出すだけです。そう考えるとわくわくしませんか。

「太平久しく候えば」は、あなたが新しいウィズコロナの世界で活躍できる可能性を示唆している言葉ともいえるでしょう。