「夫れ志の在る所、気も亦従ふ」とは、志さえあればやる気が湧き、そうすればどんな目標も叶えることができるはずだという、吉田松陰の名言です。志とは、現代の言葉に言い換えれば【目的意識】と言えます。もちろんビジネスの世界でも参考になるワードですね。以下で志を今のビジネスワードに置き換えながら、起業にも有用なお話をしましょう。
夫れ志の在る所、気も亦従ふ
「夫れ(それ)志の在る所、気も亦従ふ」の原文と訳、解説を見ていきましょう。
原文
『夫れ志の在る所、気も亦従ふ。
志気の在る所、遠くして至るべからざるなく、難くして(かたくして)為すべからざるものなし。』(未忍焚稿(みにんふんこう) 弘化(こうか)三年)
(訳)「志(こころざし)さえあれば、やる気はついてくるものだ。志ややる気さえあれば、どれほど遠くにある目標でも、かなえることができるはずだ。」
解説
「夫れ志の在る所、気も亦従ふ」とは、吉田松陰が友人である松村文祥(まつむらぶんしょう)に贈ったとされる文章です。松村は松陰と共に学んだ学友であり、当時医学の道を志して医学修行に旅立とうとしていたのです。
江戸時代は【鎖国】の時代でした。しかし、日本が200年以上も国を閉ざしていた間に、西洋諸国は技術面で目覚ましい発展を遂げていました。西欧は、貿易などのためにアジア圏にも進出するようになり、日本もその影響を看過(かんか)出来なくなっていったのです。
幕末とは江戸幕府の末期の時代である、という意味合いの言葉です。日本の歴史の中でも上記のような西欧からの余波を受け、日本人が考え方を変えようとしていた【変革・変換】の時期でした。ですので誰もが新しい時代を夢見て、新たな時代を作る先駆者であろうとしていました。
それは、武士だけではありません。多くの人を救うために医学を志す医師もまたそうでした。そして、これらのような明確な目的意識を持つことを【志】を持つと表現するのです。幕末においてはこの【志】を持つ者こそが、多くのことを成し遂げて新たな歴史を作っていきました。
吉田松陰は、この言葉を幕末という時代にあって友人を鼓舞する言葉として、また幕末という時代の本質を掴んでいた言葉として発言したと言えるでしょう。
ビジネスの目標実現も【志】が大事
道を歩くときに、目標もなくふらふらと歩く人はあまりいないでしょう。どこへ行きたいかという意識はハッキリしているはずですね。【志】とは、言い換えれば、この目的意識にあたります。
ビジネスの世界で最近使われ始めた言葉で、KPIという言葉があります。志とは、現代で例えると、このKPIという指標に当てはまるとも言えるのです。以下で詳しく見ていきましょう。
現代の【志】とは【KPI】?
KPIという言葉を聞いたことがあるでしょうか。日本語では【重要業績評価指標】と訳します。KPIとは、ビジネスにおける最終目標を達成するための、途中に設けるチェックポイントのことです。
確実に最終目標を達成するためには、途中経過が大切です。つまりいつまでに、ここまで、到達しておこうという小さな目標ですね。その小さな目標を積み重ねていくことで、最終目標に近づくことができるわけなのです。
志~すなわち目的意識とは、もちろん最終目標地点に到達するために一貫していることが大切であるということでしょう。しかし、最終目標地点とは、簡単に到達できる場所ではありません。当然、大事だと思われる通過地点が必要になります。
この通過地点を最初から意識することで、効率良く、まずは小さな目標ポイントへ到達することができるでしょう。現代の志とは、より明確化されたビジネスライクなものだと言えますね。
KPI設定のメリットとは?
KPIは、細かい目標設定ですから、最終目標に達するためにもたいへんに便利な指標です。メリットを挙げるとすると、以下のようなポイントになるでしょう。
- 今するべきことが明確になる
- 解決するべき問題に気づきやすい
- 誰から見てもわかりやすい判断基準を作ることができる
- スタッフの意識を同じ方向に向けることができる
KPIを設定するときに大切なこと
KPIを設定するときには、次のような5つのポイントに留意すると良いでしょう。効果的なKPIを設定できなければ、有効なKPIにならないからです。
- 目標は明確にする
- 具体的な数値目標にする
- 達成可能な目標にする
- 最終目標につながるKPIにする
- 直近のKPIまでの制限時間を作る
KPIは、最終目標に到達するために、その達成度合いの目安・目印です。上手なKPIを設定することは仕事を効率化させるだけではなく、スタッフのモチベーションも高めてくれるでしょう。
KPIは、起業家などの個人事業主にもたいへん役立つ指標と言えます。事業の経営戦略を立てる際に、不確かな世界に舵を切る船の【羅針盤】に似た目印になりますよ。
志を持つことで、目標実現はできる!
【志】をKPIに置き換えることで、【志】がより具体的にイメージできたのではないでしょうか。
また逆に、KPIという指標を設定する難しさも、【志】という言葉の持つ奥深さから分かっていただけたのではないでしょうか。
ビジネスにおける目標設定とは、表面的な数値を追いかけることではなく、底辺に一本筋の通ったものでなければならないと言うことなのです。
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