昼夜となく勤むべし|吉田松陰の名言

「昼夜となく勤むべし」とは、吉田松陰の名言です。要旨は「一時でも怠ることなく努力をし続けなさい」という意味です。すべてにおいて自己努力をし続ける人生を送ると、やがて他人が【高い人間性】と評価する人物像に近づいていきます。【高い人間性】を持つ人は、仕事上も優れたパフォーマンスをすることができる人物と言えるのです。

昼夜となく勤むべし

「昼夜となく勤むべし」の原文と訳、解説を見ていきましょう。

原文

『「声聞情(せいぶんじょう)に過ぐるは、君子(くんし)之れを恥づ」と。是れ実行実徳なくして虚勢虚聞ある者は、或(あるい)は一人を惑はし、一時を眩ます(くらます)べけれども、終に(ついに)天下後世の公論を免かれ(まぬかれ)ざることなれば、君子は行を積み徳を累ぬる(かさぬる)ことを、源泉の如くに昼夜となく勤むべしとなり。』(安政三年五月二十三日「講孟箚記(こうもうさつき)」より)

 

(訳)「評判が実態より高ければ、立派な心ある人はこれを恥じる」という。実際の立派な行動や人徳がないのに、それ以上の名声や評判がある者は、一人の人間を惑わしたり、一時的にごまかすことはできよう。しかし、結局は世間や後の世の人々の公平な批判を逃れることはできない。とすれば、立派な心ある人は、源泉から絶えず流れでる水のように、一瞬たりとも怠らず、行いを正しくし、人としての徳を積み重ねる努力をしなければならない、という意味である。

解説

「昼夜となく勤むべし」は、吉田松陰が記した「講孟箚記」中の言葉です。

安政元年、吉田松陰は江戸湾に現れたペリーの黒船に密航するという大胆な行動を起こします。もちろんその結果、松陰は幕府や藩からおとがめを受けました。死罪になっても仕方のないような重罪でしたが、投獄という寛大な処置で済んだのです。

野山獄という牢獄の中で松陰はさらに勉学に励み、約一年二ヵ月の獄中生活で、実に六〇〇冊の書物を読破したのでした。

その中の一つが【孟子】です。

孟子の教えの核心部分とは【至誠】です。つまり誠を大切にし、誠を体現して生きる生き方こそが大事であるということが主旨なのです。

松陰が黒船に乗り込んだのも、「アメリカに渡ってアメリカに学び、日本を近代国家にしたい」という松陰の【至誠】の生き方の表れでした。

「昼夜となく勤むべし」も「裏表なく誠実に生きよ」という、松陰の【至誠】が文章という形になった表現なのでしょう。

偽りの評価を求めることなく、真の人間性を養おう

「昼夜となく勤むべし」とは、たとえ一時でも自分の鍛錬を怠らず、人としての徳を積み重ねなさいということです。そのような行動を続けていくと、人はどうなるでしょうか。結果として、【高い人間性】を獲得することができるのです。人間性の高い人は、良好な人間関係が築けるだけではなく、仕事でも成果をあげられるようになりますよ。

人間性を高めると人生が好転する

人間性の高い人は【得】をします。たとえば、異性にモテます。そして良い友人に恵まれます。また人間として尊敬される人が多いようです。

どのような状態が【高い人間性】を持った人と言えるのでしょうか?人間性の高い人は以下のような特徴を持っていると言われます。

  • 人の話に親身になって耳を傾ける
  • 本当の気遣いができる
  • 心の中と実際の行動が一致している
  • どんな自分も受け入れているので、心に余裕がある
  • 他人に優しい
  • 他人に迷惑をかけない
  • 常識はずれなことをしない

どうしたら、このような人になれるのでしょう?それは自分の内面を見詰めることから始まると言えます。まずは下記のような行動を始めることをおすすめします。

  • 自分を厳しく律する
  • 他人の良い面を見る
  • 他人の悪い面から学ぶ
  • 自分が人からどう見られているか意識をする

高い人間性を獲得すると、以下のようなメリットがあります。

  • 社会的な信用が容易に得られる
  • 上司からも評価されやすい
  • 全般的に人間関係が円満になる

次項では、人間性と会社での評価について具体的に見ていきましょう。

会社での評価も、【人間性】が大事

企業内には【人事考課】という、それぞれの社員の業績を評価する基準が設けられています。人事考課の基本的な基準とは以下の通りです。

  • 業績目標の達成度
  • 課題目標の達成度
  • 日常業務の達成度

これらは、仕事の具体的な成果の評価であるので、一見【高い人間性】とは無関係のように思えますね。一般的に仕事ができる人とは、仕事が早い人、新しいアイデアを思いつく人など、【高い人間性】とは無関係であるように思えるからです。仕事のできる人=高い人間性を持つ人、ではないと。

しかし、【仕事のできる人】をよく観察すると、下記のような特徴が見受けられます。

  • 仕事に優先順位をつけて処理ができる
  • メールの返信が早い
  • 良好な人間関係を作れる
  • 人の話をよく聞くことができる
  • 部下への仕事の割り振りが上手である
  • 部下を育てる力がある
  • onとoffの切り替えが上手い
  • 言い訳をしない
  • 相手の立場を常に理解しようとする
  • ストレスに強い

たとえば【メールの返信が早い人】とは、単にパソコンのスキルが高いという人ではありません。メールを送ってきた相手の気持ちが理解できるからこそ、早く返信をしようとするのです。

仮に大量の仕事を抱えていてすぐにメール返信ができないときは、短いメールでもその旨を相手に伝え、送り主に不安を与えないようにするでしょう。

また、仕事に優先順位をつけることが、難しいときもありますよね。【緊急性がある仕事】と【重要な仕事】が必ずしも一致しているときばかりではないからです。仕事ができる人は、より重要な仕事をかぎ分けつつ、自分の能力・与えられた時間などの条件から仕事に順位をつけていくことができるのです。

このようなことが出来る人は、自分の能力を客観視することができる冷静な判断力を持っています。

これらの例からも、総合的な高い人間力を持つ人は、そうでない人よりも職場においても高いパフォーマンスを発揮できると言えるでしょう。

【昼夜となく勤むべし】を実行する人は、やがて【高い人間性】を獲得する

【高い人間性】を得たいと思っても、どうしたらいいのかわかりませんよね。

しかし、たとえば茶道の心などは、茶道という形を徹底的にマネすることから得ていくものです。

同じように、まずは【昼夜となく勤むべし】を実行してみて下さい。最初は形から入っても、やがてあなたはレベルの高い【人間性】を得ることになるでしょう。