心定めや|吉田松陰の名言

「心定めや、特に一旦憤激の能くする所に非ず」とは、決断を下すことの難しさを語った言葉です。現代はビジネスシーンだけではなく、己自信にいたるまで「決断力」を問われる当世と言えるでしょう。

決断力は総合的な人間力を必需とするスキルでもありますし、吉田松陰もそう語っています。以下では、決断力とは何か、決断を下すときに大切なことは何かを解説しましょう。

 

心定めや

原文

『心定めや、特に一旦憤激の能くする所に非ず、必ずや心胆を涵養鍛錬(かんようたんれん)すること素あるものにして、能くすることありとす。』(嘉永三年八月二十日「武教全書 守城」より)

訳「決断を下すということは、一時的に心を奮い起こすことでできることではない。必ずや心や胆を、水が自然にしみこむように少しずつ養い育て、体力・精神力・能力などを鍛えて強くすることによってのみ可能となる。」

解説

「本当に大切な決断を下すことは、人間力を高めていなければできないことで、難しいことだ」、吉田松陰はそう説いています。

この言葉の出典となっているのは、江戸時代の儒学者「山鹿素行(やまが そこう)」によって表された兵学書「武教全書」です。「武教全書」とは、軍隊としての戦い方から軍事技術にいたるまで兵学の百科事典というべき書物でした。

吉田松陰はこの「武教全書」を教科書として、松下村塾の門下生たちを教えていました。その講義をしたときの記録が「武教講録」として残っています。

「武教全書」とは軍事学の書ですが、軍事的なテクニックだけではなく、武士としての道徳観にも触れる内容でした。

「武教全書」の著者・山鹿素行は、戦国時代から続く古い武士の考え方ではなく、当世の武士道を提唱した人物でもありました。

武士が士農工商の上に立つのであれば、精神的にも上に立てるように、心の修養を怠ってはならないという考え方を持っていました。それまでの武士が、武力で人を抑えるだけだったことからすると、180度異なる思考法といえるでしょう。

「心定めや」という言葉も、トップに立つ者は部下よりも人間修養が出来ていなければならず、大きな責任を任された者の覚悟を説いています。

リーダーが判断を下すときには、部下や組織の様々なことを抱えることが必須になります。ですので、それだけ決断を下すことは難しいことと言えるのです。

これからは起業家や個人事業主が増え、現代は誰もがリーダーになるかもしれないとも言えますね。ですので個人の「決断力」は、誰もが必需とすることではないでしょうか。

 

決断力とは

決断力とは、己自身の責任で決断をする力のことです。そして、ビジネスシーンにおける決断力とは、「会社の企業理念にそった判断をすること」「会社の目標を達成するために必要な決断を下すこと」になります。

会社組織の力が強かった時には、会社が私人を守ってくれていた面もありました。自分で判断をしなくても企業や強い組織に決断を任せていれば良かったのです。しかし、現代の日本は能力主義の社会になり、「決断力」は経営者だけではなく、広く個人にも問われる当世になったと言えるでしょう。

企業や上司の判断についていくだけの人間では、自分の人生の選択を間違う可能性があるからです。他人に大事な判断を任せてはいけないとも言えます。

人生に対する私人の責任が大きくなったため、現代はあらゆる人が「決断力」を必需とされているとも思えますね。

幸せをつかむためには、己で「決断」をして人生を歩んで行かなければいけないと言うことです。ですから「決断力」を養うことは、すべての人にとって大切なことと言えるでしょう。

 

決断力を持つために必要なこととは

決断力とは総合的な人間力でもあります。一言で人間力と言っても漠然としていますが、その内容を細かく見ていくと、決断を下すためには何が問われているかが分かります。

判断をするための「自分の軸」を持つ

「自分の軸」とは、自分自身の思考法の根底です。決断をしなければならないあなた自身が、その時によってフラフラと考え方を変えるようでは、一貫した決断・指示ができないこともあります。ですので、思考法の基礎がしっかりしていることが大事なことでしょう。

あなたの周辺にある情報は時々刻々と変化していきます。しかし、その情報を利用するあなた自身の屋台骨はハッキリとしたものでなければなりません。そして、そのためには、あなた自身があなたという人間をよく知ることが大事なことになります。

自分はどんな本・会話・情報を重要に思っているか。何に主軸をおいて人に情報発信をするか、などを自分で認識するべきです。そこから、あなたが普段何を考え、どんなことを大事に思っているかがわかるからです。

それらが決断を下すときの「自分の軸」となるので、しっかりと把握することが大切と言えるでしょう。

目標達成のために必要なことを考える

リーダーは、自分が任されたチームのゴールや目標を明確にすると、何を決断するべきかが分かります。ゴール地点が見えるとそのためにとるべき戦略や必須の情報がハッキリしますので、チームメンバーに目標を示し導いてやることもできますね。

目的を指し示すときは、目標を数値化をするなどして目途を具体化し、チームメンバーに伝えると良いです。

 

必要な情報を集める

判断に必要な情報をたくさん集めていくことも、大事な判断を下しやすくする方法です。このとき大切なことは、必需と思われる情報をできるだけ多く揃えておくことでしょう。

  • 会社が保有する情報
  • 同僚や上司などからの口コミ的情報
  • 業界誌やインターネットからの情報

多くの情報を一手にすることで、課題の全体像を把握することができます。自分にとって不得手な分野であればあるほど、多くの資料を揃えることをおすすめしたいです。

過去を分析してから、判断を下すようにすること。そうすることで正しい解決策を導き、誤った決断を避けることができます。

 

「心定めや」は決断力を問う言葉

吉田松陰の「心定めや」は、その前後の文章から、判断を下すことの難しさ、リーダーとして決断をするには人間的な修養が必需なことを述べたものです。

現代は1人1人が「決断力」を身に付けなければいけないと言えるでしょう。国や企業に責任を任せるのではなく、己が自分の人生に責任感を持って、要所要所で大事な決断を下していかなければいけないのだと言えます。

しかし誰かの後押しが必要なときもありますね。そんなときはこちらへどうぞ。