武田信玄の名言から学ぶダイバーシティ時代のリーダーシップ

戦国大名武田信玄は、数多くの名言を残しています。またリーダーシップに優れていたことでも有名ですよね。日本企業では国籍や性別を問わず多様な人材を受け入れるダイバーシティが推進されています。現代の社会人には、多様な人材の力を引き出すリーダーシップが求められているのです。今回は武田信玄の名言を解説しながら、ダイバーシティ時代のリーダーシップを学んでいきましょう。

人は石垣、人は城、人は堀、情けは味方、仇は敵なり

『人は石垣、人は城、人は堀、情けは味方、仇は敵なり』武田信玄の有名な名言です。

石垣や堀が優れた強固な城があっても、人の力がないと役には立ちません。信頼できる人の集まりは強固な白に匹敵すると、信玄は考えていました。

人に情をかければ味方となり城以上に国を守ってくれる、仇を感じるような振る舞いをすれば、必ず反発に合い自分が窮地に立たされてしまいます。

「人」第一の人材登用で、部下たちに対して優れたリーダーシップを発揮していた武田信玄。今回は信玄が残したこの名言を元に、ダイバーシティ時代のリーダーシップについてご説明したいと思います。

武将としても政治家としても業績を残している

戦国武将のなかでも絶大な人気を誇る武田信玄は、武将としても政治家としても優秀だったと言われています。

武田軍の風林火山という旗印はみなさんもご存じだと思います。風林火山は中国の兵法書「孫子」の「疾きこと風の如く、徐(しず)かなること林の如く、侵し掠めること火の如く、動かざること山の如し」を略したものです。

信玄は風林火山の軍旗を用いて、戦国最強と言われた「武田騎馬軍団」を率いり、甲斐の虎と恐れられていました。上杉謙信との川中島の戦いは有名ですね。

他にも信玄は黒川金山、中山金山などの金山開発や、領民のために信玄堤などの治水工事も積極的に進め、財政力と国力を安定、向上させています。

信玄堤が造られた地域は笛吹川と釜無川が流れていて、大雨が振るとすぐに洪水を引き起こしていました。この洪水により、長年領民たちは苦しんでいたのです。

そこで手を差し伸べたのが、信玄です。甲斐の国主となって率先して手掛けたのが、洪水を防ぐための治水工事であったわけです。信玄は領民が安心して生活を送り、安全と農業を守る基盤を準備することが、国力を増強させる根本であると考えていたのですね。

このようなインフラ整備は、今も重要とされています。

ライバル企業との競争に力を入れるあまり、会社内部の規範が疎かになってしまえばいずれ何かしらの不祥事が起きかねません。世間の信用を失っては、ライバル企業と競争するどころの話ではなくなってしまいます。少しの油断が命取りとなる恐れがあるのです。

リーダーが自らを律してルールを守る

武田信玄は誰よりも自分に厳しい人間でした。

甲州法度之次第(信玄が定めた分国法)には「自分(信玄)が法度に違反することがあれば、誰でも投書で申し出るように」と書かれています。さらに内容によっては自らも覚悟をするとあり、信玄自身も法の裁きを受ける覚悟があったことがわかります。

リーダーがルールを守らなければ、部下が守るはずはないですよね。

会社はトップ次第などとよく言われますが、まさにその通り。これは400年前も今も変わらない真理と言えるでしょう。

個人を公平かつ適切に評価する

組織を率先するリーダーには、どの部下に対しても公平で適切な評価をすることが求められます。しかし実際は、リーダーと言っても人間ですから少なからず部下への評価に私情を挟んでしまうものです。

自分ではそのつもりがなくても、えこひいきや好き嫌いで評価をしてしまうようでは、部下からも不満の声が上がってしまいます。「ひいきしている人にだけ高い評価をするリーダー」というレッテルを貼られてしまえば、部下たちは付いてこなくなるでしょう。

信玄は「自分が人を使うのは、人を使うのではなく、その人の業を使うのだ」と言っています。つまりはリーダーが人を使うとき「相手が誰かではなく、どのような能力を持っているか」に重点を置く必要があるということです。

公平な評価が与えられれば、部下たちもやる気が出て功績に繋がります。そしてその功績が評価されることで、さらなるやる気にも繋がるのです。

逸材適所の人材配置こそが力を発揮する

武田軍の中核をなした「武田二十四将」は歴史を学んだ人ならご存じだと思います。武田二十四将は信虎、信玄、勝頼の三代それぞれに活躍した二十四人を選んだもので、いずれも個性に飛んだ面々でした。

信玄は彼らの資質や人間性を見抜き、逸材適所に配置しました。短気な性格な人、慎重な性格な人を組ませることで、お互いの欠点を補いバランスの取れた軍隊を編成したのです。

企業においても、社員によって個性や資質は異なりますよね。リーダーは部下たちをバランスよく配置し、欠点をフォローさせ合い、個々それぞれが実力以上の力を発揮できるようにしなくてはいけません。いくら優秀な人材を集めても、バランスが欠けていてはそれぞれの持ち味を活かすことはできないのです。

信玄は似たような人材だけを使っても3+4=7に過ぎないが、異なる人材をうまく配して掛け合わせればその組み合わせの組織力は3×4=12にもなる、と言っています。それぞれが相互に刺激し合い、欠点を補い合える組織こそが、大きな力を生むのです。

部下が心からついてくるリーダーになろう

多くの部下に慕われリーダーシップを発揮していた武田信玄。彼の行いこそ、まさにダイバーシティの考え方と言えるでしょう。

立派な組織を築き上げるには、人が必要不可欠です。また、どんなに立派な組織だったとしても、人がいなければ機能しません。 『人は石垣、人は城、人は堀、情けは味方、仇は敵なり』という名言から、現代のビジネスマンに求められる姿勢を学び、部下が心からついてくるリーダーを目指しましょう。